人の身体は筋肉や神経が数多く存在していています。疲労やストレスによって筋肉が
こわばったり、つっぱたりしたままにしておくと、神経痛や精神症状、緊張性頭痛な
どの症状がでてくる可能性があります。筋肉は適度にほぐしてあげることが大切です
。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はり・灸治療について
　鍼灸治療師は国家資格が必要です。国家資格を取得しても、１０年後には９割近くの方が辞めて別の道を歩む
といわれています。
　触診をして、患者さんの症状の改善をハリと灸に託すのです。そう簡単なことではありません。痛みなどの症
状の原因を探り、治療方針を立てます。治療による改善効果がなければ患者さんは二度と足を運んでくださいま
せん。多くの治療院にて治療を経験された方もおられます。すぐに治療師の力量を見抜きます。鍼灸師自身がは
り灸治療を信頼して、困難を乗り越える研究心がなければ鍼灸師は続けられません。
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　伝統に培われた先進的なはり灸治療
　はり治療は、皮膚へのハリの物理的刺激によって痛みや不快な症状の改善をはかるものです。灸治療はもぐさ
をを燃焼させたときに生じる温熱刺激によって、生体内に温熱刺激による化学変化を生じさせ、症状の改善を図
るものです。
　伝統的なはり灸治療は、体表にある経穴（ツボ）を刺激することで、刺激が経穴を結んだ経絡（線路のような
もの）を伝わり、経絡からの刺激に反応することによって改善がはかられると考えられていました。皮膚にはも
ともと、保護作用（バリア機能）、分泌作用、体温調節作用、貯蓄作用、排泄作用、知覚作用など様々な働きが
あります。
　膝裏に光を当てることで体内時計がリセットされることから、皮膚には光を感じてとる機能があることがわか
ります。匂いを感じる鼻の粘膜も、味を感じる舌も、進化の過程で皮膚が変化したものだといわれています。今
のように科学が進化していない二千年も前に皮膚に経絡の経穴と各臓器との関連性を説いた医学は遅れた医学で
はありません。反面、現代医学ほど野蛮な医学はないと思います。科学的根拠（エビデンス）という言葉がまこ
とに都合よくつかわれています。たかが１００年くらいの医学が、知識をひけらかして威張り散らすことほど非
科学的なことはありません。漢方、鍼灸は、明治以降、国の施策によって医療の片隅に追いやられてきましたが
、脈々と現代まで歴史を大切に守りながらつなげてきました。
　　現在の医療が起死回生の医学として輝いて見えるかもしれませんが、現実は「生きるものは生きる、死ぬも
のは死ぬ、生きるのは自分の生命力のおかげです」　。「医者は切るだけ、薬をくれるだけ、治すのは自分」と
いうことが真実です。人が本来持っている生命力を支えるのが医療だと考えます。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アメリカ軍もハリ治療を取り入れる
　アメリカ軍ではハリ治療の効果が見直され、兵隊さんの症状の改善に耳つぼへのハリの刺激が用いられていま
す。体調の不調を耳ツボをハリ刺激することで改善がはかられます。医薬品をそろえなくても、医薬品と同じよ
うな効果が期待され、医薬品による副作用がありません。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　筋膜の癒着や拘縮による痛みを改善
　同じ姿勢で長時間作業をしているときに、柔軟性を失った筋膜の血流が不足し,筋膜同士が癒着を起こしやすく
なると、痛みやしびれが生じます。痛みは神経が障害されたときに生じるのだと考えられていましたが、痛みや
しびれの原因が筋膜の癒着から生じることがわかってきました。
　ハリを筋膜まで通して、その様子を超音波検査機（エコー）を使って観察すると、ハリが筋膜を通ったときに
,筋膜の癒部を引き離すことがわかります。腰や肩の痛み、首の痛み、腕やわき腹の痛みを癒着した筋膜に対する
治療によって改善させることができます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　ポリモーダル侵害受容器に対するハリ治療
　痛みの感覚は、皮膚で感じるだけでなく皮下組織、筋肉の腱や靭帯、骨膜、筋膜、神経を覆う膜、椎間板など
、体のさまざまな部分でも感じます。痛みを感知するのは「侵害受容器」と呼ばれ、「侵害受容器」は組織が傷
つけられた場合に反応します。組織が傷つけられたりして痛みを感じると、「侵害受容器」が脳や脊髄に痛みを
伝えます。侵害受容器は機械的な刺激、化学的な刺激、熱の刺激など多くの痛みなどの刺激に広く反応します。
これがポリモーダル侵害受容器です。ポリモーダル侵害受容器に対してハリ治療をすると血流が改善され、痛み
の感覚が治まってきます。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　治療改善例
　　　　腰部脊柱管狭窄症　男性９０歳代　
　　医師より「腰部脊柱管狭窄症」と診断され、下部腰椎に前弯が認められた。
　　　　 治療
　　　　・刺鍼パルス治療をする。
　　　　・灸治療（灸点紙使用）
　　　　・背部への前揉捻
　　 　　治療経過
　　　　３か月後に間欠性跛行の回数が減少する。６か月後には間欠性跛行の症状が治まり、同時に下肢のしび
　　　　れが改
　　　　善する。治療当初は週３回治療をしておりましたが、現在、月１回の治療を継続している。

　　　　痛みのために正座ができない　６０歳代男性
　　　　 治療
　　　　・ハリ治療、刺鍼したハリに低周波のパルスを流す。
　　　　・間接灸による治療。
　　　 　治療経過
　　　　週１回の治療を継続して、３か月を過ぎたころから膝関節の可動域が広がり正座ができるようになる。

　　　　　脊柱のＳ字湾曲　７０歳代　男性
　　　　 　治療
　　　　　脊柱の上部は右に、腰部は左に中心よりそれぞれ５ｍｍ左右に湾曲がみられた。患者さんは糖尿病、
　　　　　高血圧
　　　　　症状により投薬を受けている。
　　　　 　治療経過
　　　　　　脊柱を支える筋肉に緊張が認められたので、ハリ治療によって筋肉の緊張を緩めました。歩行時の
　　　　　　姿勢、すり足歩行の改善に取り組み、歩行時の重心移動が速やかにできるようになり、脊柱のＳ字
　　　　　　湾曲は改善さ
　　　　　　れている。

　　　　　治療効果が認められる症状　　
　　　　　変形性膝関節症、痛風、神経痛、腱鞘炎、腰痛、冷え性、咽頭炎、眼精疲労、リウマチ、頸頚腕症候
　　　　　群などに効果が認められています。光線治療との併用によってさらに治療効果を高めることができま
　　　　　す。